公式メディア連動企画「RTJ2022って何だ?」

公式メディア連動企画

WEBマガジン「ロボットダイジェスト」とコラボし出展の見所や業界の期待をご紹介します!

ロボットダイジェスト×ロボットテクノロジージャパン

2022.06.29

安川電機 小川昌寛 取締役専務執行役員 ロボット事業部長インタビュー多様なニーズに向き合う

ロボットメーカー世界最大手の一角を成す安川電機(D-47)。最大規模で出展する同社のブースは、RTJ2022の見どころの一つだ。ロボット事業を担う小川昌寛専務執行役員は、「変種変量に対応する最新提案を披露する。自動車産業を中心にサプライチェーンが集積する中部地方は、国内製造業における自動化の旗振り役を担うべき地域」と力を込める。

自動化ニーズが顕在化

人とロボットが協働して組み立てる、八幡西事業所の工場(提供)

―足元の受注は好調とのことですが、供給の状況はいかがですか。

わが社はこれまで需要地生産の考えのもと、現地調達を強く推進してきました。その取り組みが幸いし、最も好調な中国をはじめ、堅調な欧米、国内向けにも、厳しいながらも何とか一定の供給を保てている状況です。今年6月に中国の常州で立ち上がる新工場ではロボット部品も製造する計画で、底堅い受注状況や市場の拡大に対し、安定供給の維持に力を尽くしています。

―新型コロナウイルス禍以前からロボット市場の成長が見込まれていました。

新型コロナウイルス禍による上振れはそこまで強くは感じませんが、製造現場の課題は顕在化しました。このため、以前から高かった省力化や自動化ニーズをリアルに感じる機会となりました。お客さまにとって自動化投資の優先順位は高く、計画的に予算や行動を配分する方針を再確認できたのではないでしょうか。

多様性が市場をけん引

―特に成長をけん引する分野は。

電気自動車関連の投資は象徴的で目立ちますが、現在の好況をけん引していると言うほどでもないと思います。むしろ、引き合いは自動車関連部品、3C(コンピューター、通信、家電)、建設機械、農業機械など全産業を通じて好調です。昨年度下半期に米国はライフサイエンスの分野など、ロボットの活用領域が着実に広がっています。こうした分野は統計上ではマテリアルハンドリングとして一括(くく)りにされてしまいますが、その占有比率が上昇している点も見逃せません。個々の市場が小さくとも、今の拡大するロボット市場で比率が上がっている事実は、実数としての大きな伸びを意味します。

―多様性が底堅い市況を支えている。

そうです。製造現場に同じものはなく、同じものを作る工場でも作り方や工程が異なります。多様な自動化ニーズに応えるには、システムインテグレーターに任せっきりにするのではなく、われわれロボットメーカーが歩み寄らなければなりません。完成したアプリケーションではなく、お客さま自身が思い描いた「やりたいこと」を実現するのが肝心です。

データを基に自律判断

変種変量に対応するコンセプト展示はiREX2022でも注目を集めた

―RTJ2022では、どのような展示をしますか。

製品やアプリケーションの単体展示ではなく、変種変量に対応するコンセプトを披露します。「ここまでできる」という具体的なデモを見ていただき、それをお客さまの現場に合わせたら何ができるかを一緒に考えたい。メイン展示の核は、デジタルツインの活用と自律分散制御です。

―2022国際ロボット展(iREX2022)でも注目を集めました。

ロボットなどの製造設備が、データに基づき自律的に判断して生産するシステムで、多くの来場者に興味を持っていただきました。私は、メカトロ製品にデータ活用を融合させたソリューションコンセプト「i3-Mechatronics(アイキューブ・メカトロニクス)」の現実版だと思っています。

中部は国内製造業のフラッグシップ

―デジタルツインなど仮想空間を活用する手法が増えました。

仮想を扱う技術が進歩するほど、リアルの物の重要性が高まります。仮想だけが先行することはあり得ず、仮想とリアルの両方があってこそ「ツイン」です。データに基づいて仮想空間で動かすわけですが、リアルから得たデータでなければ、ただのシミュレーションです。そして、そのデータがエビデンス(根拠)となって改善やロスの低減を導きます。

―詳しく教えて下さい。

例えばレストランだったら、レシピ通りの調理や配膳は計画できますが、食後の片付けでは、皿の状態を認識して、整列や廃棄といったタスクを一つ一つプランニングしなければなりません。その過程で得たデータから食べ残しの種類や量を分析できるため、フードロスの改善につなげられます。つまり、自動化技術は、過去のデータに基づいた自律行動に向かうほど、いろいろなロスの低減につながるわけです。その結果、持続可能な開発目標SDGs(持続可能な開発目標)の多くの項目の実現に近付く。カーボンニュートラル(炭素中立)やESG(企業の長期成長に必要な環境、社会、ガバナンスの観点)の達成にも貢献します。100点満点ではないかもしれませんが、継続的で実効性のある環境対策につながります。そして、ロスを低減できた分だけ増産することで、より多くの利益を生み出せます。

―その提案をどのような人に見てもらいたいですか。

これから本当に向き合わなければならないのは、多様なニーズを持ちながらもわれわれが今まで明確に応えられなかった、圧倒的多数の中小企業です。その意味で、「いろいろな」人に見てもらいたい。中部地方は自動車産業を中心にサプライチェーンが高度に集積する地域で、いわば国内製造業のフラッグシップです。そこでリアルに開催されるRTJ2022は、自動化がもたらす価値を共有し、世界に示す場として非常に重要です。

(聞き手・ロボットダイジェスト編集部)

プロフィール

小川昌寛(おがわ・まさひろ)

1987年九州芸術工科大学(現九州大学)工学部卒、安川電機製作所(現安川電機)入社。2004年ロボティクスオートメーション事業企画部長、06年ロボット事業部ロボット工場開発部長、07年新規ロボット事業推進部長、09年新規ロボット事業統括部長、10年ロボット技術部長。10年米国安川米州統括。12年執行役員、16年ロボット事業部長、19年取締役、20年常務、22年代表取締役専務。1964年生まれの58歳。

公式メディア紹介

ニュースダイジェスト社が、産業用ロボットに特化した「生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン」を2018年11月に創刊。新製品や新サービス、導入事例、先進企業の取り組み、統計データ、助成制度など、あらゆる情報を発信する。
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