公式メディア連動企画
WEBマガジン「ロボットダイジェスト」とコラボし出展の見所や業界の期待をご紹介します!
2022.06.28
ファナック 稲葉清典 専務執行役員インタビュー簡単なロボットあります
まずは触ってみませんか?
「ROBOT TECHNOLOGY JAPAN(ロボットテクノロジージャパン、以下RTJ)2022」に最大級の70小間で出展するファナック(B-37)。中部圏で開かれるロボット展示会にこれほど大規模に出展するのは今回が初めてだ。ラインアップを大幅に拡充した協働ロボットをはじめとして、さまざまなソリューションを提案する。ロボット事業本部長の稲葉清典専務執行役員は「初めてロボットに触る方でも簡単に使えるロボットがあると知ってほしい」と話す。
自動化の位置付けが変わった
―足元の景況感はいかがですか?
自動化の需要は急速に伸びています。従来は品質の安定や生産性向上によるコスト削減などが自動化の主目的でしたが、「事業継続に不可欠な物」として導入の相談を頂くことが増えています。熟練技能者の不足を補う、感染症対策として人の密集を防ぐなど、導入の目的が変わり、自動化の位置づけが変わったと感じています。
―ロボットの生産台数も増えています。
月産能力が2012年からは5000台でしたが、今では1万1000台です。これも上限に近付き、生産能力の増強が必要となっています。建屋は増築せず生産性を向上し、対応していきます。
―生産能力を増強しているのですね。
それでも数年内には厳しくなるため、さらなる拡張も検討しなければなりませんね。自動化への投資は一過性のブームではありません。慢性的な人手不足で、ロボットは持続可能な製造現場に欠かせないものになりつつあり、その社会的責任の重みを感じます。
―ロボットの使われ方に変化は?
「人が主体の製造現場」に対してのロボットの導入が急増しています。既存の設備を生かしながら、人と同じ空間で、人が作業する工程に後付けでロボットを導入し、作業の一部を代替する使い方です。そのような現場ではロボットに馴染みのない方も多く、使いやすさが重要視されていることも感じます。
高まる協働ロボットへの関心
―人が主体の領域に導入する。つまり協働ロボットへの関心が高まっていると?
安全柵なしで使える協働ロボットへの関心は非常に高いと思います。ファナックは、3月の国際ロボット展で協働ロボット「CRXシリーズ」のラインアップの大幅拡充を発表しました。可搬質量5kg~25kgまでをカバーします。6月30日から開かれるRTJでも、CRXシリーズは展示の大きな目玉です。展示の半数以上がCRXのシステムです。
―協働ロボットでは、CRシリーズとCRXシリーズを展開しています。
CRシリーズは従来からの産業用ロボットを使い慣れた方にとって使いやすい商品です。一方、CRXシリーズは、ロボットを使ったことがない方でも扱いやすいよう開発しました。「協働ロボットに興味はあるけど、難しいのでは?」と二の足を踏む現場の方は多いと思います。そういった方々に「簡単なロボット、あります!」と伝えられればと思います。
―どんなところが使いやすいですか?
タッチパネル上でアイコンを並び替えるだけのビジュアルプログラミングや、音声操作にも対応します。また、アームを直接手で動かして動作を覚えさせるダイレクトティーチングをよりしやすくするなど、常に機能強化を図っています。また、新機能をファナックのウエブサイトから逐次ダウンロードして使用できるのも特徴です。
気を使わずに「ゆるく使える」ロボット
―5月に本社で開いた「新商品発表展示会」では、ティーチレスばら積みピッキングや人工知能(AI)を使ったパレタイジングなど、ロボットの高度なアプリケーション(活用法)も注目を集めました。
これも、ロボットを簡単に使えるようにする一環です。裏では複雑な演算処理をしていますが、その分ユーザーは細かいプログラミングや調整をしなくて済みます。気を使わずに、ロボットはもっと「ゆるく使える」ようになるべきです。目的を伝えるだけでそれを遂行できるようにしたい。
今回のティーチレスばら積みピッキングの肝は、仮想空間における最適経路の生成技術、ビジョンセンサーのデータ処理技術、その演算処理を支えるファナックの産業用パソコン(PC)「iPC」です。演算処理の負荷がさらに大きいAIの学習アルゴリズムを活用する場合も、ロボットの制御装置にiPCを外付けし、同様に対応することができます。
工作機械の自動化提案に注力
―そのほか、RTJの見どころはありますか?
工作機械の専門展「メカトロテックジャパン」を主催するニュースダイジェスト社の展示会ですから、工作機械の自動化提案に力を入れています。例えば旋盤チャックへのワークのローディングです。従来は精密な位置決めが必須でしたが、おおよその位置決めでローディングが可能です。具体的には力覚センサーを使い、チャックの位置やジョーの動きに合わせて、ロボットがワークの位置や姿勢を自動で調整します。既設の工作機械に簡単に後付けできるロボットシステムも展示予定です。その展示では機械に貼付したマーカーを3Dビジョンセンサーで読み込み、ロボットの設置位置ずれを自動で補正しながら、動作できることも紹介しています。
―ブースは見どころ満載ですね。
ロボットの活用が広がっている中、出来る限り多くのソリューションを展示します。使いやすさを追求しつつも、商品の基幹である信頼性を両立させています。機構部設計、センサー、ソフトウエア、回路設計、数値計算処理など、さまざまな要素技術を統合しています。関係者一丸となって取り組んできました、どれ一つ欠けても実現できなかったと思います。
―最後に、今回のRTJへの期待を聞かせてください。
これほど大規模に中部圏のロボット展示会に出展するのは今回が初めてです。一人でも多くの方にロボットを実際に見て、触っていただけることを願っています。日本の製造業の中心地である中部において、「簡単なロボットあります」ということを伝えたいですね。また、来場された方とじかに交流してその声を聴き、将来のロボット開発の方向性を考える参考にできればと思います。展示会での交流を通して、日本におけるものづくりの活性化に貢献できれば幸いです。
(聞き手・ロボットダイジェスト編集部)
プロフィール
稲葉清典(いなば・きよのり)
2009年1月入社、13年5月ロボット研究所所長、6月取締役、10月専務取締役ロボット事業本部長、16年3月取締役専務執行役員ロボット事業本部長、21年6月から現職。カリフォルニア大学大学院バークレイ校修了の工学博士。神奈川県出身、44歳。