公式メディア連動企画「RTJ2022って何だ?」

公式メディア連動企画

WEBマガジン「ロボットダイジェスト」とコラボし出展の見所や業界の期待をご紹介します!

ロボットダイジェスト×ロボットテクノロジージャパン

2022.06.01

農業と宇宙ベンチャーが講演一歩先行くロボとは?

産業用ロボット展「ロボットテクノロジージャパン(RTJ)2022」では、セミナーや主催者展示にも注目したい。会期3日目の7月2日には「新分野の学ぶロボット活用術」と題し、ロボットを使って新分野を切り開くベンチャー企業が登壇する。過酷な環境の農業や宇宙空間でロボットを使う先駆者から、製造業や物流現場で一歩進んだ自動化を実現するヒントを探る。ニュースダイジェスト社が、産業用ロボットに特化した「生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン」を2018年11月に創刊。新製品や新サービス、導入事例、先進企業の取り組み、統計データ、助成制度など、あらゆる情報を発信する。
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野菜の出来を見極め

inahoの「AI農業ロボット」

inaho(イナホ、神奈川県鎌倉市、菱木豊最高経営責任者<CEO>)は、農業分野にロボットを適用するベンチャー企業だ。

移動台車にロボットアームや人工知能(AI)を搭載した「AI農業ロボット」を自社開発。それを使った野菜や果物の収穫ロボットのレンタルサービスを軸に、農作業の負荷軽減や省人化、データ活用による経営の改善などに取り組む。
 収穫ロボットは現在、アスパラガスやトマトなどに対応する。

inaho_大山宗哉COO

同社では農産物を「一括収穫」と「選択収穫」の2種類に分ける。コメやムギなどの機械で一括して収穫する作物と、トマトやアスパラガスなどの成長具合を判断して人手で1つずつ収穫する作物との違いだ。
 その上で、選択収穫をできるロボットを展開する。AIを使った画像認識で野菜や果物の成長具合を見極め、出荷に適した作物だけを収穫する。

大山宗哉最高執行責任者(COO)は「これまで、人の判断を自動化できなかったために機械化が進まず、全て人手で作業した。暑い中でかがんだり、しゃがんだりすれば身体への負荷も大きい。この分野に自律的に判断をする作業ロボットを展開できれば、農業に革新を起こせる」と話す。

ロボにも人にも優しい

inahoのロボットがミニトマトを収穫する

ただ、ロボットを導入すれば万事が解決する訳ではないという。「現状の環境にロボットを導入するのでなく、全体で生産性の上げる環境作りが大切。アスパラガス農家へは、収穫ロボットより先に栽培方法の変更を提案する」(大山COO)。

一般的にアスパラガスは畑の地面に、高さ200mmほどのうねを作る。しかし、香川県には、高さ500~600mmの「高うね」という栽培方法があった。腰をかがめずに作業ができるため、身体負荷が少ない。当然、適度に高さがある方がロボットも作業しやすい。
 大山COOは「農業生産には複数の作業工程があるため、全てを自動化することは困難で、人との協働環境が重要。ロボットが作業しやすい環境条件かつ、人が作業しやすい環境を整えることで生産性は何倍にもなる」と訴える。

現場を一番知るのは?

畑を回るinahoのロボット

また、同社は日本だけでなく、世界の中でも農業技術の先進国であるオランダで事業を展開する。
 オランダは国を挙げて、モノのインターネット(IoT)などの科学技術を取り入れた農業を推し進める。温度管理や水やりの自動化など植物の生育に関する領域が発展している。
 一方、人の実作業、特に収穫工程には決定的なソリューションがない。

そこでAI農業ロボットを売り込む。強みの画像認識技術を、収穫作業だけでなく、作物の位置や成長具合のデータ取得にも生かす。

大山COOは「ロボットは作業しながら畑全体の情報を収集できる。温度や湿度などの栽培環境のデータや解析技術との組み合わせで収穫量の予測などにつなげている。セミナー当日も、機械化しにくい業界への自動化技術の展開方法や、取得データの活用事例の紹介を通じて、受講者のお役に立てば幸い」と意気込む。

宇宙ごみの回収

アストロスケールの「ELSA(エルサ)-d」(提供)

宇宙の衛星軌道は、人工衛星、役目を終えた人工衛星やロケットの一部、それらが衝突して発生した破片などのスペースデブリ(宇宙ごみ)で混雑しており、その混雑が原因で宇宙開発に支障をきたす。
 このため、スペースデブリの除去をはじめとする「軌道上サービス」は重要性が日に日に増す。

現在、低軌道から高い軌道まで多くの人工衛星が稼働する。アストロスケールホールディングス(東京都墨田区)は、その全軌道における軌道上サービスに専業で取り組む世界初の民間企業だ。
 RTJ2022ではアストロスケールHDの岡田光信CEOが「宇宙船外汎用作業ロボット」についてセミナーで講演し、特別展示としてスペースデブリ除去技術実証衛星「ELSA(エルサ)-d」や卓上人工衛星の模型などを展示する。

2030年にはスタンダードに

アストロスケールの「ELSA-d」の稼働イメージ(提供)

技術的な研究開発を担う子会社のアストロスケール(東京都墨田区、小山貴義社長)は、2021年から経済産業省の宇宙船外汎用作業ロボットアーム・ハンド技術開発を受託している。

この開発を担うCV&ロボティクスグループの岩井隆マネジャーは「ロボアームの技術的なポイントは、目で見ること(コンピュータービジョン)と腕(ロボットアーム)。それを司る脳(制御)、ビジョン、アームのバランス感覚が大切で、それぞれの技術は連携して開発せねばならない」と強調する。
 顧客の声に耳を傾け、サービス内容を作り込む一方、人工衛星もしっかり作る。ソフト面から衛星やロボアーム・ハンドなどのハード面まで、一気通貫で作り込むのが特徴だ。

また、ロボアーム・ハンドのコア技術には汎用性がある。エルサ-dのデブリ捕獲方法は磁石式。しかしコアとなるモーターやカメラなどは、ロボアーム・ハンドとも共通で、開発は地続きとも言える。ベースの技術は共通することも多い。
 「開発は、元々のハイペースなりに順調。未知の領域をかき分ける文字通りの最先端技術。中長期的な目標として2030年までに軌道上サービスがスタンダードな世の中を目指す」(岩井マネジャー)

難しいのは、技術フィールドが広すぎること。光学や電気工学、機械工学などを全て高いレベルで実現させねばならない。それぞれ単体だけの研究開発なら、これまでもあったかもしれない。しかしアストロスケールはそれらを統合し、新たな技術を生み出している。

宇宙ロボは産業へ

「軌道上サービスとは、日本の道路でいう日本自動車連盟(JAF)のようなもので、宇宙のロードサービス」と岩井マネジャーは笑う。
 そもそもスペースデブリについては、技術と法規制、ビジネスモデルの3つが存在せず、アストロスケールHDは軌道上サービスを実現するためにその3つに同時に取り組む。
 事業は多様化しており、現在は主に①運用を終了した衛星の除去(デブリ化防止)②既存の大型デブリの除去③軌道上の観測や点検④人工衛星の寿命延長の4つだ。

RTJ2022では「宇宙の持続可能性」との問題意識を提示する。「デブリ処理や宇宙での『リデュース(減らす)』『リユース(再利用)』『リサイクル』の頭文字を取った『3R』実現のためだけに、人を宇宙空間に運ぶのは難しい。人の代わりに働く宇宙ロボを宇宙へ運び、運用する。宇宙ロボは産業となるし、持続可能な宇宙においてはそうならざるをえない。そのために、コミュニティー作りにも責任を負う」と岩井マネジャーは意気込む。

(ロボットダイジェスト編集部)

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